ADA-SCIDは世界の新生児20万人~100万人に1人の割合で発症する病気です。1
ADA-SCIDとは?
ADA-SCID は両親から受け継いだ遺伝子の異常によって起こる疾患で、主に免疫系に影響して再発性で日和見性の真菌、細菌およびウイルスの感染、白血球の減少(リンパ球減少症)および発育不良などを引き起こします。 治療せずに放置すると死に至ることも少なくありません。1-3
ADA-SCIDと診断される時期は?
患者のほとんどは、生後6ヵ月未満で症状が現れ ADA-SCIDと診断されます。 ADA-SCIDの最も初期の症状として肺炎、慢性的な下痢、広範の発疹、発育と知能の遅れなどが挙げられます。成長してから症状が現れる人もいます。一般的に発症が遅い人は、幼児期に発症した人よりも症状が軽いようです。
国や地域によっては、新生児スクリーニングでADA-SCID患者が見つかることがあります。
ADA-SCIDの治療法は?
ADA-SCIDの治療には酵素補充療法 (ERT), 造血幹細胞移植 (HSCT)、遺伝子治療 (GT)があります。2 ADA-SCIDが疑われたり、ADA-SCIDと診断されたりした場合は、医師にご相談ください。
ADA-SCIDと共に生きる
免疫不全であると、外出することがチャレンジになります。 しかし、適切な治療と管理によってそれが可能になります。
- Hershfield M. Adenosine Deaminase Deficiency. 2006, Oct 3. [Updated 2017 Mar 16]. In: Adam MP, Ardinger HH, Pagon RA et al., editors. Seattle WA: University of Washington. Accessed online at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1483/
- Whitmore KV, Gaspar HB. Adenosine deaminase deficiency – more than just an immunodeficiency. Front Immunol 2016;7:1-13.
- Sauer AV, Brigida I, Carriglio N, Aiuti A. Autoimmune dysregulation and purine metabolism in adenosine deaminase deficiency. Front Immunol 2012; 3:1-19.
- Great Ormond Street Hospital for Children. Severe combined immunodeficiency (SCID). Accessed online at: https://www.gosh.nhs.uk/conditions-and-treatments/conditions-we-treat/severe-combined-immunodeficiency-scid/
- van der Burg M, Mahlaoui N, Baspar HB, Pai SY. Universal newborn screening for severe combined immunodeficiency (SCID). Front Pediatr 2019; 7:1-5.
ここでは、あるADA-SCID患者の体内では何が起こっているかを紹介します:4,5
1. 毎日、体の中で細胞が分裂しています。 これは、すべての人にとって正常な生命現象です。
2. ADA はプリン塩基の再利用経路の重要な酵素です。 ADA は人のすべての組織に存在しますが、特に、リンパ系で最も多く、高い活性であることが分かっています。 ADA はアデノシンと2デオキシアデノシンをイノシン、2’デオキシイノシンへと不可逆的に脱アミノ化する酵素です。4
3. ADA- SCID患者の体内では、ADA活性が欠損または低下することで有毒な代謝物質であるアデノシン (Ado)、 2’デオキシアデノシン (dAdo) とデオキシアデノシン三リン酸 (dATP)が蓄積します。4,5
4. dAdo と dATPの増加は正常なDNAの合成や修復を阻害し、Ado の増加は様々な組織で免疫活性を障害します。 リンパ系でADAが最も多いことから、ADA- SCID 患者では感染と戦う上で不可欠なリンパ球増殖および機能不全を起こします。 4,5
5. ADA-SCID は、骨格異常、神経発達への影響、肺症状、臓器障害、骨髄異常、希少な皮膚腫瘍、肝臓や腎臓病にも関与しています。2,4
ADAが正常に機能しないと、免疫系は感染を防ぐことができません (免疫不全)。 これが通常、幼児期に診断されるADA-SCIDに一般的な症状を引き起こします。1
ADA-SCIDには3種類あり、それぞれ症状が異なります。
ADA-SCIDが疑われる状態や症状1,2*
ADA欠損による重複合免疫不全症 (SCID).
割合: 最も多い
診断時の年令 : 概ね
6 カ月未満1
最も一般的な症状:2
発育不全
日和見感染症
慢性下痢
発疹
反復性肺炎
非感染性肺疾患
他の症状:2
肺機能障害
成長の遅れ
骨格異常
骨髄異常
肝臓機能異常
神経障害
皮膚腫瘍
遅発型/晩発型 ADA欠損症
割合: 患者の15-20%
診断時の年令:概ね
1-10才2,4
最も一般的な症状:2
慢性中耳炎
副鼻腔炎
上気道感染
手のひら/足裏のいぼ
慢性肺機能障害(心臓弁膜症による)
自己免疫疾患
アレルギー
他の症状:2
乳頭腫ウイルス感染症
成長の遅れ
部分欠損型ADA 欠損症
割合 :まれ
診断時の年令:
全年齢2
臨床像:2
赤血球ではADA活性が非常に低いか欠損していますが、他の細胞のADA活性は正常で、免疫機能も正常です。
*ADA-SCIDおよび他の種類の重症複合免疫不全症 (SCID)における肺障害は代謝不全が原因である場合があります。1
治療をせずに放置すると、生後1~2年で生命を脅かす状態になります。 早期に診断し、できるだけ早く治療を開始することが重要です。
ADA-SCIDの診断と治療法について。
- Whitmore KV, Gaspar HB. Adenosine deaminase deficiency – more than just an immunodeficiency. Front Immunol 2016;7:1-13.
- Hershfield M. Adenosine Deaminase Deficiency. 2006, Oct 3. [Updated 2017 Mar 16]. In: Adam MP, Ardinger HH, Pagon RA et al., editors. Seattle WA: University of Washington. Accessed online at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1483/
- Sauer AV, Brigida I, Carriglio N, Aiuti A. Autoimmune dysregulation and purine metabolism in adenosine deaminase deficiency. Front Immunol 2012; 3:1-19.
- Flinn AM, Gennery AR. Adenosine deaminase deficiency: A review. Orphanet Journal of Rare Diseases 2018;13;1-7.
- Kohn DB, Hershfield M, Puck JM, Aiuti A, Blincoe A, Gaspar B et al. Consensus approach for the management of severe combined immune deficiency caused by adenosine deaminase deficiency. J Allergy Clin Immunol 2019;143(3):852-63.
ADA-SCID は以下によって診断可能です。2
ADAの酵素活性の測定(血液検査)
ADA⁻SCIDは通常、赤血球内のADA活性がないか非常に低いこと (正常値の1%未満)に加え、血漿中または乾燥濾紙血スポット(DBS)のアデノシンとdAdoが高水準であることにより診断されます。
ADAの遺伝子検査
遺伝子検査は血液検査による診断を確定するためにも使われます。
遺伝子検査により、遺伝子内の両アレル変異を確認します。 これには、人体の機能を指示する化学的データベースであるDNAの検査が含まれます。 遺伝子検査は疾病の原因になる可能性のある遺伝子内の変異を明らかにします。2
遺伝子が ADA-SCIDにかかるリスクを示唆
ADA-SCIDの患者さんは、は両親から1つずつ、2つの変異した遺伝子を持っています。 両親は、両方とも変異遺伝子を1つ持っていますが、通常はADA-SCIDの兆候や症状は現れません。
両親がそれぞれ1つの変異遺伝子を持っている場合:
25%
の確率でADA-SCIDの影響を受けません
50%
の確率で 子供には1つのADA の変異遺伝子が引き継がれます
25%
の確率で2つのADA の変異遺伝子が引き継がれ、ADA-SCIDを発病するおそれがあります
ADA-SCIDの治療について詳しく学びましょう。
- Whitmore KV, Gaspar HB. Adenosine deaminase deficiency – more than just an immunodeficiency. Front Immunol 2016;7:1-13.
- Hershfield M. Adenosine Deaminase Deficiency. 2006, Oct 3. [Updated 2017 Mar 16]. In: Adam MP, Ardinger HH, Pagon RA et al., editors. Seattle WA: University of Washington. Accessed online at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1483/
- Great Ormond Street Hospital for Children. Severe combined immunodeficiency (SCID). Accessed online at: https://www.gosh.nhs.uk/conditions-and-treatments/conditions-we-treat/severe-combined-immunodeficiency-scid/
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治療法の選択肢は国によって異なることから、ADA-SCIDの治療については医師にご相談ください。
リンク集
あなたやご家族にADA-SCIDの疑いがある場合は、必ず医師にご相談ください。
新たに診断されたとき
生まれたばかりの赤ちゃんがADA-SCIDを患っていると知らされたらショックでしょう。 頭が混乱し不安を覚えてもおかしくありません。 ADA-SCIDという病気についてこれまで耳にしたことがなかった方もいるでしょう。 ADA-SCIDについて詳しく学び、赤ちゃんへの対処・対応に役立つヒントやツールを見つけてください。 心配がある場合は、必ず医師にご相談ください。
治療後の生活
治療後、医療チームに相談してお子さんがADA-SCIDと共に生きていけるように励ましてください。 お子さんは ADA-SCID と共に生きていくために学ぶこと必要です。 医師のアドバイスに従って、定期検診を受けることが不可欠です。 お子さんには状況に応じて治療し、対処・対応していくことが必要であり、成長しても継続することが不可欠です。
メンタルヘルス・マネジメント
ADA-SCIDの赤ちゃんを育てることは、両親や看護する人にとってストレスがたまり不安が募る、つらい経験になるおそれがあります。 あなた自身の心の健康をいたわる時間を取り、1人ではないことを覚えておくことが重要です。 SCIDのコミュニティに属する他の人とつながってサポートを受け、不安がある場合は遠慮せずに医師に助けを求めてください。
迅速な治療
診断を受けて途方に暮れるかもしれませんが、出来る限り早く治療を受けることが重要です。
感染の予防
お子様がさらされる細菌やウイルスなどを減らすことが不可欠です。
家族や友人への呼びかけ
お子さんが ADA-SCIDを患っていることを家族や友人に知らせ、感染しないようにするために、隔離が有効であることなどについて説明することも大切です。